こんにちは,食べることとロードバイクが大好きな当サイトの管理者「旅すけ」です。
今回は,とある休日の出来事を書きます。
夫は仕事で不在。
天気良し!風無し♪
サクサクと家事を済ませて、いざ一人、サイクリングへ〜
出発前に予めの目的地を特には定めず、とりあえず北の方向へ走ってみることにした。
走り始めて1分。
「あ〜、これこれ、この風の心地良さ!空が綺麗だなぁ。今日もサイクリング日和だなぁ」
と、楽し過ぎて早くもニヤけ顔が止まらない。
こんな時は、顔を隠してくれるサングラスとフェイスカバーの有り難さを実感する。
かっこ良さげに風を切って走っているのに、こんなにニンマリした表情をしているなんて、誰にも見せられない。
フェイスカバー無しだったら,一人でずっと笑顔のまんま自転車に乗ってるただの不思議な人だ。
漫画なら、恐らく頭の上に「♪、♬、♩〜」の音符が出ているであろうくらいのルンルン気分でしばらくサイクリングを楽しんでいたところ、見通しの良い直線で、はるか前方に人影を発見。
とんでもなく田舎道なので,遠い前方の人影も割と気付きやすい。
「ロードバイク!?…
では、ない、か…」(がっかり…)
ロードバイクに乗っている時に、他のロードバイクを見つけると嬉しくてテンションが上がる。
車で移動している時でさえも、ロードバイクを見つけると、少し減速して食い入るように見入ってしまう。
犬のようにお尻に尻尾が付いていたら、きっとブンブンと左右に振りまくっている状態だと思う。
そんな調子なので、この日は、じわじわと距離が詰まる前方の人影がロードバイクではないことが分かって尻尾の揺れはすっかり止まった。
そもそも初心者の私のスピードで、前方を走るロードバイクに追いつけるはずもないのだが。
特に加速している訳でもないのにじわり、じわりといつの間にかその距離が詰まっていき、少しずつ、人影の正体が分かってきた。
『ママチャリに乗った学ランの高校生』だ!
なるほど、確かここから北に1km位進んだところに高校があったなぁ、あそこの学生かー!
いや、待てよ、今、何時だ?…
視線を下に落としてサイクコンピューターの時計を確認すると11時を回ってる。
めっちゃ社長出勤!(笑)
しかも、全く急いでる素振りもないし。
この子ったら学校着いたらすぐ給食じゃん。
ハンドルを左右にフラフラさせながら、いかにも呑気なオーラを放って走ってる。
そりゃ、初心者の私のスピードで追いつくはずだ。
それにしても、何でこの時間に登校してるんだろう。自転車に乗れてるから具合は悪くないんだよな。寝坊でもしたのかなぁ。1時間目が嫌いな科目だったのかなぁ。本当は休みたかったけどお母さんに尻を叩かれてしぶしぶ出てきたとか…
と、しばし妄想モードに突入していると、あっという間にママチャリ高校生のすぐ後ろまで来てしまっていた。
そして、ふと気づいた。
『あれ!?ロードバイクで他の自転車を追い抜く時ってどうしたら良いんだっけ??』
追い抜かれる経験なら多々ある。
自分の後方に自動車やロードバイクの気配を感じてきた時、前後左右の安全を確認し,左側寄りに減速して走りながら、右手でどうぞって合図を出せば、サーッと、風のように抜いて行ってくれる。
追い抜いていくロードバイクの背中を、“カッコいいなぁ”とキラキラした目で遠くなるまで眺める経験なら何度も味わっている。
でも私がこれまでロードバイクで誰かを追い抜いた経験は、まだない。
えーーっ、あの、カッコいい側をやるの!?
初心者の,この私が!?
キャー、嬉しいっっ!!⤴️
他のロードバイクを見つけた時よりもすっかりテンションが上がってしまった。
相手がママチャリだということも忘れて。
それにしてもこの高校生、すぐ後ろに私が迫ってきていることに全く気付いてないなー。
避ける気配は全然無いし、相変わらずフラフラと左右に揺れながら走ってる。
高校生をよく見てみると,
…ん!?
あーっっ、耳にイヤホンしてる!
んもぅ、危ないなぁ。
後ろの気配に気付いてないんじゃ左側に寄せてくれるはずもないし!
でもなー,急に勢い良く追い抜いて驚かせたらいけないから、挨拶でもしながら声をかけてこちらの存在をアピールしながら抜いてみるか!
道幅は広いし、車も来てない。
歩行者もいない。
よし、このタイミングかな。
「おはよーございまぁす!」
音楽を聴いてる人にも聞こえるようにと少し大きめの声を出して挨拶をしながら、ママチャリ高校生を追い抜いてみた。
高校生がチラッと右を振り向いて、その表情は少し目が見開いたようなそうでもなかったような…。
油断してる時に急に声が聞こえて驚いたかな。
ま、気にするほどでもないか。ちゃんと挨拶もした訳だけし。
加速した分、スゥーッと体を抜ける風が動く。
うわぁ、気持ちいい!
私、速い!
左側の高校生の自転車が一瞬,止まってるように見える!アスリートってこんな気分なのかな。
何度も言うが、相手がママチャリ高校生だということを私はすっかり忘れている。
ロードバイクで抜き去る快感を人生で初めて味わった。
速く走れるようになったような充実感を得た。
高校生からの挨拶の返しはなかったけれど、まぁ、田舎の高校生とはいえ、思春期のお年頃だから仕方ないかと気にとめず、まるでロードバイクのレースで誰かを抜き去ることでもしたかのような,なかなか心地良い余韻に勝手に一人で浸りながら、ペダルを踏み込みさらにスピードを上げた。
ママチャリ高校生の気配は,みるみるうちに後方へと離れていった。
そして、道は上り坂に差し掛かった。
上り坂は不得意な分野なので、ガチャガチャとギアを調整し、軽いペダルを回して自分のペースでゆっくり進んでいくことにした。
少し登ると坂の勾配はさらに上がり、自分の息も上がってきたので、もっと軽いペダルへと切り替える。
その横を車が数台、エンジン音と共に軽快に通過していく。
車はパワーが違うなー。
と、当たり前のことに感心しながら、坂をえっさほいさとペダルを回して登っていると前方左側に高校の正門が見えてきた。
ちょうど坂を登り終えたところに高校の正門が開いている。
もう少しで上り坂が終わる。頑張れ,私〜。
足は疲れてきてるけど,ギアはこれ以上軽くせず,このまま踏んで登ってみよう。
ヨイショ,よいしょ。
あと少し。
坂終了まであと5メートル,3メートル…
このまま登りきれそうだと感じてホッとしたその瞬間、右側後方から、突然現れた黒い影!
えっっっ!?!?∑(゚Д゚)
そう、突然、颯爽と現れた黒い影の正体は、少し前に、追い抜いた、あの、ママチャリ高校生!!
姿を横目で捉えて確認しようとするとスローモーションのような動きで見えてくる。
突然の登場に驚き過ぎて,さらに上り坂で体力を消耗していることも影響して,自分の体がゆっくりとしか動かない。
学ラン姿の高校生は,顔を耳まで真っ赤にさせて、ペダルの上に立ち上がり、ダンシングで体全体を使ってママチャリを揺らし、スーーーっと初心者ロードバイクを抜き去って行く!!
いつの間に!?
全く気配を感じなかった…。
追い抜いた直後は、ピュー〜っと勢いそのままに左側の正門へ曲がって行き、あっという間にその背中は見えなくなり…。
抜き返したくとも敵の姿は既に無し。
や、やられた…。
ママチャリに負けた…。しかも上り坂で。
嘘か、幻か!?
いや現実だ。
全米が悔しくて泣いた…。
いや、そこまではないけど。
想定外の,突然突きつけられた敗北感。
これは,間違いなくあの高校生が意図的に追いかけて来て,そして追い抜いて行ったんだよな〜。
音楽を聴きながら、ゆったり遅刻して登校していたママチャリ高校生の若い闘志になんらかの火を付けてしまったのかもしれないな〜。
いや,待てよ。
ママチャリ高校生がこの経験をきっかけに、いつかロードバイクに興味を持つかもしれない!
そして、競技者になって、何かの代表に選ばれて、とある大会で優勝してしまうかもしれない!!
そして,そして,ヒーローインタビューで「今の自分があるのは、高校生の時、ロードバイクの女性に追い抜かれて、負けず嫌いの根性に火が付いたお陰です」ってコメントしちゃうのかもしれない!!!
ロードバイクの速度は遅いまま,私の妄想だけが加速していく。
しかし,この妄想が現実になったら、私にとって今日のこの敗北はむしろ大勝利だ。
ま、そこまでいかなくても、ロードバイクに乗ってみたいなくらいでも思ってもらえていたら嬉しいか。
と、思いがけず突然食らってしまった敗北感を、止まらない妄想と心地良い風に薄めてもらいながら、その後のサイクリングの続きを楽しんだのでありました。
サイクリング中,面白い出来事に遭遇したら,また書きます。
お楽しみに!
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