こんにちは!ロードバイクと食べることが大好きな当サイトの管理者「旅すけ」です。
アニメ「弱虫ペダル」をきっかけに2020年10月からロードバイクをはじめました。
ロードバイクに乗り始めて約1年目となる2021年10月31日(日)「第21回ツール・ド・おおすみサイクリング大会」が開催されると知りました。
ロードバイク購入後,週末にサイクリングを楽しむ程度で、走れる距離こそ少しずつ伸びてきてはいるものの,どうにか1日中頑張って走ったら100kmを超えられた日もあったかな…,程度のレベルだというのに,
『エイドステーションが一番多いから色々な物をたくさん食べられそう!』
という食いしん坊な理由だけで,大会の中で最も難関な“Aコース上級者向けロングコース約110km”をポチッと申し込んでしまいました。
人生初参加のサイクルイベントで、いきなりの上級者コースへの挑戦。果たして,ゴールすることはできたのか!?その結果をお伝えします。
❶ 大勢のサイクリストに圧倒される
私が住んでいる所は,とってものどかな田舎なので,日頃の生活の中でロードバイクを見かけることは滅多にありません。
ドライブ中に偶然ロードバイクを見かけたりしようものなら,振り返ってまで目で追いかけ、ロードバイクのメーカーや装備,乗っている人の服装や靴など,色々気になって見入ってしまう私です。
イベントのこの日は,会場である串良平和公園の駐車場に入るやいなや、大勢のサイクリストとたくさんのロードバイクが一気に視界に入り、テンションが爆上がりました。
「うわっ、このロードバイク格好良い!」
「何,この色!?どこのメーカー?」
「こんな車載の方法があるんだ!」
「上着羽織ってる人もいる、やっぱり必要だったかなぁ」
「女性がいた、良かった〜」
と大興奮で、目はキョロキョロ、心はワクワク、すっかり落ち着きを失ったまま、とりあえず係員の誘導に従い、車を駐車させることにしました。
田舎者が初めて東京に来た時のような挙動不審さです。
ソワソワしながら、車を降り、受付を済ませ、ロードバイクと自分の準備を整えていると、あっという間に開会式の時間になりました。
なんということでしょう!
ドローンが飛んでいました!!
上に下にと高さを調整しながら開会式の様子を撮影してくれています。
生まれて初めて見るハイテクな撮影方法に興奮がさらに増すばかりで、すっかり私の心が落ち着きを取り戻す余裕はありませんでした。
開会式が終わると、アナウンスに従ってメインステージ入口付近にて自分の愛車と一緒にスタートの時間を待ちます。
上級者コースの参加者が待機しているスペースに移動してみてふと気づきました。
自分以外の参加者が全員、なんだかとてつもない猛者に見える!!
使いこなしたロードバイク、お揃いのジャージ、足の置き場が分からないくらい小さなペダル、筋肉の付きまくった足、日焼けした黒いふくらはぎ…
「上級者コースを走る人は、こういう人達なのか…、し、しまった!!」
周囲を見渡し、自分が身を置いた場所の現実に気づき、先ほどまでの浮足だったワクワクやソワソワした気持ちが、スタートまでのわずかな時間であっという間に後悔と不安でいっぱいの緊張感へと変わっていきました。
午前9:00、いよいよスタートです。
大会関係者の方々や会場に応援に来てくださった方が手を振って見送ってくださいます。
「大丈夫、大丈夫、せっかくだから楽しもう、前に進もう」
そう自分に言い聞かせながら、まだ余裕があるかのように作った表情で手を振り返しつつ、スタート会場を後にしました。
❷ 36.6km地点「田代麓交差点」で7割消耗
これが、上級者ロングコースの地図です。
緊張感いっぱいのままスタートを切りましたが、最初のエイドステーションまでの約10kmを集団の中に紛れて走るうちに私はある勘違いをします。
「めっちゃ走れそうな人と同じペースで走れてる。私のレベルでも全然大丈夫じゃん!」
最初の10km、実は平坦そうに見える道は、緩やかな下りになっていました。
それを認識しないまま、周りのペースについて行けてると勘違いし、普段のペースよりかなり早い速度を出し、一生懸命に足を回していました。
何故か初心者感を隠したい気持ちまで出てきてしまって、いつもより重いギアで余裕があるように装って走り、信号待ちがあると休める嬉しさでホッとするのに、私が通る時だけ、タイミングが良いのか悪いのかスムーズな青信号で、今までにないスピードで序盤からとにかくこぎまくりました。
最初のエイドステーション「高山鉄道記念館」を過ぎてから、コースは徐々に上りが増えていきました。
それでも周囲のスピードが落ちることはありません。
短めのクライムなら、まだ体力のある前半なので、無理をすればなんとか着いていけます。
無理をして踏んで回して、それでも離されてしまうから下り坂が来てもまた踏んで、自分のペースというものをすっかり見失って、どんどん足を削っていきました。
さらに、イベントの雰囲気というのはありがたいもので、頭にぬいぐるみを乗せて走っている人がいたり、有名企業のロゴが入った派手なジャージを着ている人がいたり、テレビで見る有名人(MBC南日本放送のタレント竹之内雄太さん)が伴走車から声をかけてくださったり、見る物全てが楽しくて、気分はずっと楽しく走ることができました。
そして、自分の足にどれほど疲労が蓄積しているのか注意を払うことがどんどん後回しになっていきました。
続くアップダウンでじわりじわりと体力を失い、無理をすれば追い付いていた前の人の背中も遂には見えなくなり、数人、また数人と追い抜かれ、息は上がり、下り坂が来ても乱れた息が整うことも無くなりました。
コース地図を頭にインプットする時「田代麓交差点の給水所を過ぎたらクライムが始まるから、そこまでは足を残しておこう」そんな風に計画を立てていたはずだったのに、既に普段のサイクリングの帰り道くらいの疲労感になっていました。ようやく辿り着いた田代麓の交差点で給水をしながら心底思いました。
「ここが昼食会場だったら良いのに…」
迫り来る新田峠の手前で、体力の7割を使い果たしてしまっていました。
❸「がんばれ」がこんなに嬉しい言葉だったなんて
ロードバイクを始めるまでは、全く存在を知らなかったサイクルイベント、しかし、ツールドおおすみは今年の大会が21回目の開催、きっと大隅半島の地域の方々にはとても馴染みのあるイベントになっているのでしょう。
すっかり自分のペースを乱し、何の戦略もなく不器用に、ただがむしゃらに走っている汗だくの私に、地域の方々が何人も応援してくださる声にめちゃくちゃ励まされました。
沿道に並んで拍手をしてくださる方、通り過ぎゆく車から窓を開けて顔を出し手を振ってくれる子供達、遠くから畑仕事の手を止めて鎌を握ったままの手を振り上げてくださる老夫婦、本当にたくさんの方が応援してくださいました。
数えきれない多くの声援が温かく、そして優しく、私の背中を押してくれました。
新田峠は、私にとって予想以上の激坂でした。
登っても登っても上り坂が続いて、何度もへこたれそうになるメンタルを「がんばれ」の声や拍手の音に支えてもらいました。
日常生活の中では,なんとなく「がんばれ」が使いづらくなった世の中の流れを感じていました。
頑張ってる人に「がんばれ」を言ってはいけないと教えられてきた気がしていました。
いつ、誰を思い、どの言葉を選択するのかが大切なのであって「がんばれ」の言葉自体が悪かった訳ではないんですね。
超初心者が上級者コースに挑んでへこたれそうになった時、こんなにもエネルギーになる言葉だったことを知りました。
大会終了後、サプライズで沿道に応援に来てくださっていた知人へそのことを伝えたら「『がんばれ』の声援の中に『楽しんで』とか『怪我をしないで』の気持ちをこめていた」とのこと。
そんな愛がいっぱいの応援、力にならないはずがありません!
改めて、言葉の大切さを実感できる経験となりました。
たくさんの応援パワーをもらって、なんとかかんとか一番高い山を登り切ってみたら、大大大絶景が待っていました!!
「振り返って見える景色は、ペダルをこいできた証」
サイクル雑誌か何かにこんなことが書かれていたことを思い出しました。
ロードバイクってなんだか時々、人生を感じさせてくれます。
振り返ってというか、目の前にどーんと飛び込んできた景色ですが、ここに来るまでの峠の坂が鬼のようにきつかっただけに、反動で心が躍りまくりました。
「頑張った甲斐があったなー」ロードバイクを止めて、しばらく見惚れていましたが、登り坂で何人にも抜かされ、位置的には後ろの方です。
ゆっくりしている時間的余裕はありません。
それでも大海原の絶景があまりにも美しくて、一気に下って見えなくなってしまうのがもったいなくて、
“ブレーキいっぱい握りしめて〜、ゆっくり〜、ゆっくり〜、下ってく〜🎶”のゆずの曲を思わず実践してみました。
長めの下り坂のお陰で足を休めることができ、素晴らしい景色のお陰で走るモチベーションも回復させることができました。
「こんなに疲れたらもう駄目だ」と思っていても、サドルに体重をあずけて、ペダルを回していると、疲労が回復してくる時間帯がくるのがロードバイクのまた良いところの一つです。
田代麓の交差点で7割の消耗を感じて不安になっていましたが、もう少し走れそうな兆しが見えてきました。
スタートしてから58.2km、岸良海岸に到着です。
❹ エイドステーションで課題に気づく
私は食べることが大好きです。
人生初のサイクルイベントへの参加で、順番的には、かなり後ろの方を走っているにも関わらず、エイドステーション到着時に並んでいた食べ物は全種類いただきました。
パンやおにぎり、焼きたてのソーセージ、バナナにお汁粉に丸ぼうろ、どこのエイドステーションで出された物も全て美味しくて、幸せでした。
でも、ただ美味しいと食べてばかりいた訳ではありません。
とても大事なことを教わりました。
補給のタイミングや内容、そして量です。
私は日頃のサイクリングでは、お腹が空いてきた頃にコンビニやカフェに立ち寄り、食べたい物を食べたいだけ食べて走っていました。
食べ過ぎて、後半のサイクリングで胃がもたれたり、補給のタイミングが遅れて、急な空腹に襲われ最後までエネルギーが持たなかったりしたことがありました。
今回のイベント参加を通じて、獲得標高1,795mで109.5kmを走る時で、この頻度と量の補給が必要ということを体感することができました。
補給の量には強度や体重によって個人差もあるかと思いますが、この日の補給は内容も量も私にとっては最適でした。
田代麓の交差点までで7割の体力を使ってしまったという疲労感がありつつ、走り続けられているのは、前述の沿道からの声援というパワーと、この『適切な補給』の影響が大きいと感じました。
ただ、自分のペースが遅かったせいで、岸良海岸の“さつま揚げ”とふれあいパーク内之浦の“けせん団子”が到着した時には既に無くなっていました。
どんなにか美味しかったんだろうと食いしん坊の私にはその味が気になって仕方ありません。
今後のサイクリングでは、今までの補給のあり方を見直す、という課題と、次回のイベント参加では食べ物が品切れになる前にエイドステーションに到着できるようペースアップの練習を積むという自分の課題を見つけることができました。
❺ 迫り来るタイムリミット
13時45分、65.6km地点のIHIスペースポート内之浦まで走ってきました。お楽しみの昼食会場です。
なんと本日のランチメニューは「焼肉丼」!
お肉の焼ける良い匂いに鼻を膨らませて、焼肉丼を待つ行列に並びました。何気なく辺りを見回してみると… ん!?
『次のエイドステーションにはタイムリミットがあります15:20』
と書かれた看板の文字が目に飛び込んできました。
うっそ〜〜ん。(;_;)
食べることが大好きな私、好きなことはゆっくりじっくり味わいたいタイプなので、ロードバイクも遅いですが、食べるのはもっと遅いんです。
しかし、悲しいかな、これは想定内でした。
こんなこともあろうかと、自宅から準備してきたジップロックを取り出し、配られたばかりの焼肉丼の半分を割り箸でせっせと詰め、袋の外からギュッギュと握りしめておにぎりを作り、ジャージの背中のポケットにむぎゅっと放り込みました。
丼に残した半分量の焼肉丼を口の中に急いで頬張って、モゴモゴさせている口をマスクで隠しながら、空き容器を手際良く処分し、愛車の元へ小走りで戻って、すぐに再出発しました。
タイムリミットのある次のエイドステーションまで約15km、全力疾走です。
アップダウンのある道のりではありましたが、幸い、右手側にずっと青い大海原の絶景が広がっていて、気持ちを前向きにさせてくれました。
さらに、コースも後半になってくると、走っている前後の方が、だいたい同じくらいの脚力のようで、ペースが似たり寄ったりになり、声をかけ合う余裕こそないものの「お互い、頑張りましょうね」の雰囲気が漂っていました。
14時57分、ふれあいパーク内之浦のエイドステーションへ。
「良かった〜、間に合ったー」
ほっとしながらバナナやおしるこを満喫しました。
ホッとするのも束の間。
スタッフのお一人が現実を知らせてくださいます。
「あと20分で、この会場は閉めまーす」
またもやモゴモゴした口をマスクで隠しながら、えっさかほいさか、山登りの再開です。
そこからの30kmは、もうがむしゃらでした。
ハンドルの下を握ってみたり、サドルに座るお尻の位置を前や後ろに変えてみたり、骨盤を立ててみたり、足を踏み込む時より引く時に力を込めてみたり、思いつく限りのありとあらゆることを試しました。
そうでもしなきゃ、もう足が悲鳴を上げてて、走れそうになかったんです。
途中で移送者にピックアップされていく方も視界に入りましたが、残り30kmのところまで来たら、どうにか完走してみたくなって、もがいてみることにしました。
とにかくペダルを回して、走って、走って、走りまくって、そしたら、しんどさがピークの残り10kmくらいのところで、大会サポーターの鹿屋体育大学の方が声をかけてくださいました。
体力は終わってますけど、口は元気なんですよね。
一緒に走りながら、雑談をしていたら、気分が紛れて、時々笑うこともできて、最後の数キロが緩い上りになっていましたが、全身の疲労感と気分は真逆で楽しくゴールを目指すことができました。
出発の時の午前中の陽の光が、すっかり夕日に変わる頃、16時24分、無事ゴール地点に到着しました。
燃え尽きました。
使い果たしました。
足も体力も何も残っていません。
初心者の無謀な挑戦は、自分の全部を出し切ってなんとかゴールまで帰ってくることができました。
ゴール後にロードバイクを降りてから受け取った豚汁が、五臓六腑に染み渡りましたー。ご馳走様でしたー。
❻ メカトラブルに驚く
ロードバイクを購入してからの1年、幸いにもパンクをしたり、チェーンが外れたりといったトラブルに見舞われることなく日頃のサイクリングを楽しんできた私ですが、この日の上級者コース参加者は約350人。
スタートの直後から、沿道にロードバイクを停めて何やら修理をし始める人がいたり、走っている途中で「パンクでーす」と言って脇に減速していく方がいるのを目の当たりにして、意外とメカトラブルがたくさん発生することに驚きました。
ちょうどイベントの一週間前の週末に、ロードバイクを購入したお店へ「ツールドおおすみに出るので点検を」と持ち込んでいたことも功を奏し、私自身は最後までメカトラブルに見舞われることなく走り切ることができました。
点検に持って行ってて良かったな、ということと、まだ自力でパンク修理することに自信がないので、もしもの時に備えてちゃんと出来る様になっておかなきゃなと思いました。
❼ 愛車を洗車して締めくくる
イベントに参加した翌日は、一緒に走ってくれた愛車を眺めながらイベントの一瞬一瞬を走馬灯のように思い出し、完走できた感動に浸りました。
汚れのついたフレームやチェーンを綺麗に拭き上げて、油を差し、最後まで一緒に走ってくれてありがとうと伝えました。
そして、東京オリンピックのあったこの夏、インタビューされる選手の多くが「まずはこの大会を開催してくださったことに感謝します」と発言されていたことを思い出しました。
感染症対策を踏まえたイベント企画をしてくださった関係者の皆様、「もう少しで給水所ですよ」と声をかけてくださったサポーターのゼッケンを付けた方々、安全に右左折ができるように交通整理をしてくださった方々、給水所やエイドステーション等のボランティアの方々、声援を送ってくださった沿道の方々…たくさんの方のご尽力があってこの大会が成立したのだと思います。
『ツール・ド・おおすみ』Aコース(上級者向けロングコース)に超初心者が無謀な挑戦をしてみたら、苦しみと汗だくとがむしゃらの先に、かけがえのない感動を経験することができました。
これからもこのイベントがずっと続いていきますように。そして、こんな楽しいイベントが各地で増えていきますように!
イベントに関わってくださった全ての皆様、本当にありがとうございました。
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